迷盤? 中森明菜9thアルバム「不思議」

平成生まれが語る昭和歌謡【第4回】迷盤?中森明菜9thアルバム「不思議」 連載・コラム

中森明菜にドハマりしていた僕はある日、彼女のとんでもない作品と出会ってしまった。それは1986年に発売された9thアルバム「不思議」という作品だ。

第一印象は「なんだこれ」。
ジャケットの写真は、真っ黒い衣装を身にまとい顔も半分隠れてしまっていてもはや誰だかわからない中森明菜。
ご存知の通り彼女はアイドルであり歌手だ。そしてみんな彼女の歌声を聴くためにレコードを買っているはずだ。
なのにこのアルバムでは彼女の歌声がよく聴こえない。強烈なリバーブがかかっており、ボーカルがかなり遠くから聴こえるようなアレンジになっていて完全に演奏と一体化してしまっている。

 

発売当時「不良品なのではないか?」という問い合わせが絶えなかったらしい。多分彼女はそれを聞いてニヤリとしていたに違いない。「作戦通りだ」と。
知っている人も多いかと思うがこの作品は彼女が自己プロデュースした作品だ。「不思議」というコンセプトでアルバムをつくることになったのだが、完成した作品を聴いて彼女は「全然不思議じゃなくね?(実際はこんな言い方してないよ多分)」と。彼女のその一言によりボーカルと演奏が一体化したようなサウンドになったそうだ。
多分問い合わせがくることも予想していたのではないだろうか。彼女を知っている人なら違和感を感じるだろうし、知らない人に「これ中森明菜が歌ってるんだよ」といっても信じてもらえないかもしれない。当時リアルタイムでこの作品と出会った人はどう思ったのだろうか。彼女の自己プロデュース力の高さには驚くばかりだ。

 

YouTubeで、収録曲の「Back Door Night」と「マリオネット」を続けてテレビで披露したときの動画を観たことがある。
やたら重そうな衣装を着てエキゾチックに体をくねらせながら歌う明菜は圧巻。生演奏とお金のかかっていそうな演出にも要注目。
お茶の間でこんな熱いライブ映像が流れたら夕食どころではなかっただろう。当時リアルタイムで観ていた人たちは完全に箸が止まっていたに違いない。

 

この作品が世に出てから約30年。
古臭いどころかむしろ近未来のサウンドを聴いているような感覚になる。僕の歌謡曲ブームには波があって、その波が全然来ていないときでもこのアルバムは聴きたいと思える。中森明菜というジャンルを聴いている感覚だ。
このテイストのアルバムがこの作品限りになってしまったことをとても残念だと思う。今だから言えるとこだが正直なところもう一枚ぐらい出してほしかった。

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